会津大学大学院 修士1年を終えて

会津大学の桜

はじめに

お久しぶりです。会津大学大学院 修士2年の新冨です。 この文章は、この1年間自分が何をしてきて、何を学んだか、修士1年を終えた時点での立場からどのように感じたかを書いたポエムです。 あくまで私自身の主観に基づく文章なので、読み流してもらって構いません。 またこの文章は自分で草稿を書き、ChatGPTに清書してもらい、それをまた自分で清書しています。

プロジェクトマネジメント

研究室にある積読

会津大学修士課程は、コンピュータ・情報システム学専攻(CIS)と情報技術・プロジェクトマネジメント専攻(PM)の2つのコースに分かれています。2つのコースの主な違いは、修士論文の要件です(詳細は履修案内を参照してください)。CIS専攻では修士論文が修了要件ですが、PM専攻では2年間で4回の半年ごとのプロジェクト成果発表が修士論文に相当するとされています。 私は入学当初CIS専攻でしたが、入学して2日目に指導教官から「専攻を変えないか?」と提案され、結果的にPM専攻になりました。大学側はPM専攻の学生数を増やしたい意向があったようです(要出典)。私がPM専攻に入る前は、2022年度入学のPM専攻生は、PM専攻長の研究室(Y研)の学生だけでした。そのため、2022年度のPM専攻生は、Y研と私の研究室の学生のみです。

CIS 専攻の研究進捗セミナーや修士論文の発表方法は、卒業論文発表と大差ありません。しかし、PM専攻の評価指標は独自のものです(テクニカルレポートの審査)。半年ごとのプロジェクト成果発表は、規則上は学生課にレポートを提出するだけでよいとされていますが、実際にはスライド発表を行います(研究室によるかもしれません)。また、レポートの形式は決まっておらず、プロジェクト成果発表の評価基準から必要な項目を推測する必要があります。通常の論文形式では不十分で、プロジェクトのマネジメント方法や個々の貢献度など、追加で記載する必要があります。これらの追加項目は、自分たちで方法や書き方を見つける必要があります(PM専攻長に過去のレポートを見せて欲しいと要望したけど無視されちゃった...忙しいのかな...)。

私は卒業論文で3次元再構成を研究していましたが、修士のプロジェクトでは自動運転をテーマに選びました。プロジェクトのテーマは卒業論文とほとんど関連がなく、複数の分野(車両力学、ロボティクス、教師あり学習強化学習、シミュレータ、sim-to-real、自動運転)を扱う必要がありました。それぞれの分野について調査しながら、プロジェクトの成果を出し、プロジェクトマネジメントを行うことが求められました。最初の半年間は、文句を言いながらもやる気を見せていました。正直、CIS専攻にしておけばよかったと思ったこともありました。しかし、修士1年を終えてみると、何が必要か、何が分かりやすいか、評価してもらうためにどのような情報を書けばいいかなど、自分で考える力が身についたと感じています。半年ごとの成果発表により、振り返りを行い、良かった点と悪かった点を考慮し、次の半年間に活かせるため、発表やレポート、プロジェクトの進め方の質が向上している実感があります。指導教官も同様の感想を持っていました。また、PM専攻では半年に1回成果発表を行うため(8月と2月)、2回分の成果を持って就職活動に臨むことができます。そのため、就職活動で研究内容について尋ねられた際には、自信を持ってこれまでの研究成果を話すことができる利点があります。

総括すると、PM専攻は、全ての責任を自分で取りたい、取る覚悟がある人に向いているかもしれません。2023年度はPM専攻の学生が増えたとのことで、うれしいです!(一緒に茨の道を歩もう)

ボランティア活動

活動拠点の近くのタイ料理屋のトムヤムクン

子供IT未来塾では、小学5年生から中学3年生を対象に、Raspberry Piを使用してプログラミング、センサー制御、音声認識・合成、Webスクレイピングなどの技術を教えるボランティア活動を行っています。 自分はそこでTAとして子供達にプログラミングを教えていました。集中力に欠ける子供たちにプログラミングを教えることは大変でしたが、彼らが興味を持って集中できる方法を毎月試行錯誤することは楽しかったです。特に、自分が主に指導していた生徒が最終的に良い作品を作成し、発表することができたときは感動しました。子供IT未来塾は6月から10月まで、月1回の土日に開催されます。私たちは金曜日に東京の青梅に向かい、土日に指導を行い、日曜日の夜に会津に戻るスケジュールでした。月曜日の朝9時からTAを務めることは大変でしたが、それでも充実した経験でした。

未来塾では、参加する講師やTAが作成した教科書や教材を使用しており、毎年内容が改訂されます。2022年まではLibreOfficeで教科書を作成し、プライベートGitLabで管理していましたが、今年からはLaTeXで作成し、GitHubで管理するようになりました。このため、Gitコマンド、GitHubLaTeXの使用が必須になりました。 長期的に未来塾を続けるためには、教科書を改訂できる人材を増やす必要があります。未来塾には会津大学だけでなく、他大学の学生や教授、社会人TA、高校生TAも参加しています。そこで、私たちの研究室が主催して教科書作成講座を開催し、非情報系の方々にも教科書の更新を手伝ってもらうことになりました。 講座の資料や演習の作成、開催時期の調整、Raspberry Piの配布手配など、多くのタスクをこなす必要がありましたが、全3回、1講座あたり4時間という長めの講座を無事に終えることができました。 一連の講座の開催にあたり、事前に根回しを行ったり、先回りして行動することの重要性を学びました。これらの経験は、今後のボランティア活動やキャリアにおいても役立つことでしょう。

子供IT未来塾は、プログラミングやIT技術を学ぶ子供たちにとって貴重な機会を提供するだけでなく、ボランティアとして参加する大学生や教職員にとっても、教育やコミュニケーション、プロジェクト管理など、多くのスキルを身につけることができる場です。これからも、未来塾を支える人材が増え続けることで、より多くの子供たちがIT技術を学び、未来のIT業界を支える人材が育っていくことを期待しています。

研究と論文執筆

研究で使用するレーストラックを敷いた体育館

修士1年では、私は6月に国際学会の筆頭著者1本、7月に国際学会の共著1本、12月に研究会の筆頭著者1本の論文執筆の機会に恵まれました。私の研究室では、締め切り駆動執筆(deadline-driven writing)が一般的で、研究結果が出る前に締め切りが設定され、その期限に合わせて結果を出すスタイルです(ただし、これは私個人の感想かもしれません)。

このため、結果を出すまで、満身創痍で実験に取り組み、論文を書き上げることになりますが、正直なところ、このプロセスは好きではありません。実際に論文を執筆するたびに、自分自身の言語化能力や研究遂行能力の低さを痛感します。一方で、執筆を繰り返すことで自分の経験値が向上している実感があります。最近周囲の人から「なぜそこまで研究のモチベーションが高く、持続できるのか」と何度か聞かれることがありました。確かに、心身ともに消耗しながらも続けている理由について考えてみました。結論として、コンピュータや最先端技術が好きで触れたいという思いや、大学院生として研究することが当たり前だという心構えがあるため、継続しているのだと思います。

授業

授業で扱ったFPGA

大学院の授業は、学部と大差ないものややりがいのあるものがあるなど、玉石混合の印象です。大学院の授業の成績は、ほとんどがテストではなく、レポートやスライドの発表によって決まります。全体的には、学部より簡単にAを取得できると思います(大学院生にとっては、授業よりも研究が主要な活動だからです)。私は毎クオーター2科目(4単位)履修していました。

輪読会

本州最北端の石碑のNeRF

卒業論文に関連してサーベイを行っていた際に、NeRF(Neural Radiance Fields)という技術に出会いました。当時、卒業論文でRGB-Dカメラによる3次元再構成を研究していたので、複数のRGB画像から非常に滑らかな3次元モデルを生成する技術に大変驚きました。興味がある方は以下の論文をお読みいただくことをお勧めします(私はNeRFの専門家ではありませんが、個人的な好みで選びました)。

  • NeRF(オリジナル論文)
  • Instant-ngp(ハッシュ化によるNeRFの高速化手法)
  • Block-NeRF(都市レベルの規模に拡大したNeRF)
  • NeRF2Real(NeRFのシーンを強化学習用のシミュレータとして扱い、現実世界でロボットを動かす)
  • MERF(メモリ効率化し、リアルタイムで動作可能なNeRF)

さらに詳しく知りたい方は、Awesome-NeRF(https://github.com/awesome-NeRF/awesome-NeRF)で興味深い論文を探してください。また、NeRFを体験してみたい方は、iOSアプリのLumaAI(https://lumalabs.ai)を使ってみてください。

卒業論文に取り組んでいた時点で、私はニューラルネットワークや深層学習の知識がありませんでした。しかし、NeRFはニューラルネットワークを使用しているため、NeRFの論文を理解するには深層学習の勉強が必要だと考えました。そこで、深層学習を研究している人や数学に強い人など興味を持つ人たちを集めて、有志で輪読会を開催しました。課題図書として選んだのは深層学習 第二版です。

選定理由は、2022年の3月ごろに改訂版が出たばかりであり、深層学習という幅広い領域を網羅的に扱っているという評判を聞いたからです。輪読会では、毎週1回、とある研究室の図書ラウンジに集まり、担当者が1章ずつ説明するスタイルで進めました。このおかげで、CNNやTransformerの概要を把握することができ、修士の研究で利用しているCNNの理解や、最近の生成系AIが何をやっているかを雰囲気レベルで理解することができました。 また、輪読会のメンバーは非常に優秀で、正直、会津大でこのレベルのメンバーが集まるとは思っていませんでした。輪読会での議論の時間も楽しかったですし、輪読会が終わった後の雑談時間もとても楽しかったです。

TA

本気を出した会津の冬

私は学部の授業や修学支援室でTAを務めていました。振り返ってみると、メールマナーを守れていない学部生が多くいることに気づきました。CCを外したり、返信先を無視したり、敬意のない文面を書いたりする人にたびたび出会いました。宛先、差出人、質問内容を簡潔に明記し、質問内容を理解するために必要な背景知識や資料を添付することを心がけてほしいと思います。

部活動

友人と行った恋人坂
友人と行った長岡の花火大会
同期が出場したインカレ(香川県
いつもお世話になっている芦ノ牧温泉の足湯

私はトライアスロン部に所属しており、日々の練習が研究などのストレス発散にちょうど良いです。大学院に進むと同期が減りますが、部内で築いた人間関係は貴重だと感じています。この1年間、コロナが社会的にフェードアウトし、部活のイベントが増え、部として活動的な年だったと思います。学年関係なく親しくなった部員同士で旅行に行く機会も増え、楽しかったです。残り1年で悔いのないよう楽しんで過ごしたいと思います。

就活

就活で東京に行った時に時間があったから寄った日比谷公園

就活期間は、自分が将来何をしたいのか、何を成し遂げたいのかを見つめ直す機会となりました。期間としては、12月から3月の約4ヶ月就活をしていました。最終的に満足できる結果で終わり、自分の経験が評価され自己肯定感が上がりました。就活の詳細についてはこちらの記事でより詳しく書いています。 yutashx.hatenablog.com

終わりに

プロジェクトマネジメント、ボランティア、研究・論文執筆、授業、輪読会、TA、部活、そして就活を経験し、あっという間に修士1年が終わりました。Google Mapsのロケーション履歴で行動を分析してみたところ、2022年には大学に2204時間滞在したことが判明しました。1年が8600時間であることから、土日祝日を含めて1日平均6時間大学にたことになります。6月と11月にあった40連勤(もっとやってたかも)では精神的に消耗し、大学院生の大変さを身をもって体感できました。1年間で得られた教訓として、大学院生活を送るためには体力、精神力、そして根性が非常に重要であることを学びました。また、私は目を瞑れば1分ほどで寝付ける体質であり、それが恵まれていることに気づきました。正直、このペースをもう1年続ける自信はありませんが、残り1年を精一杯頑張っていきたいと思います。