Personal AI AgentのUIはチャットだけでよいのか

最近考えていること

前回のPersonal AI AgentのためのPersonal Context Hub実装では、ヘルスケア、位置、写真、家計、メモ、予定などを、Hermes Agentから横断参照できる基盤について書きました。

yutashx.hatenablog.com

その基盤が動き始めてから、Personal AI Agent の UI について考える時間が増えました。

この記事は、完成した設計論ではありません。最近考えていることを、一度まとめておくための記事です。

今気になっているのは、主に次の3つです。

  • チャットは強いが、すべての情報を受ける場所にすると重くなる
  • UIは、Agentから情報を受け取るだけでなく、自分の判断を返す場所でもある
  • 事実を見る場所と、Agentに意味づけしてもらう場所は分けたほうがよい

以下では、HermesをSlackで使っていて感じたこと、ChatGPT Pulseを見て面白いと思ったこと、自分が今考えているUIの分け方を順に書きます。

Slackだけだと重くなる

私はHermesとの主なやり取りにSlackを使っています。調査を頼む、相談する、ジョブの失敗通知を受け取る。このくらいの用途なら、Slackだけで十分です。

しかし、そこに記事の推薦、朝の天気や予定の確認、日次レポートまで流し始めると、すべてが同じ未読になります。今すぐ見るべき失敗通知と、興味があれば読めばよい記事が、UI上では同じ優先度で扱われます。生活の情報は、内容の正しさだけでなく、いつ届くかも大事です。

問題はHermesが知っている情報の量ではなく、性質の違う情報をすべてチャットで受け取ろうとしたことでした。

チャットは、目的がまだ曖昧なときに強い

チャットをやめたいわけではありません。むしろ、Personal AI Agentの入り口として、チャットは引き続き必要です。

「このメモから自分が考えていることを整理して」「来週の予定を見ながら、どこで作業時間を取るか相談したい」といった依頼は、最初から到達点が決まっていません。返答を見て追加で条件を出し、必要なら方向を変える。その往復の中で、自分の意図もはっきりしてきます。

ファイル編集や調査のように、Agentの実行結果を見ながら次を決める仕事もチャットに合います。一度の操作で意図を表すより、文章で細かく条件を渡せることのほうが大事だからです。

一方で、「この記事に興味があるか」のような問いに、毎回文章で返事をする必要はありません。問いが単純なら、チャットはむしろ重いUIになります。

ChatGPT Pulseを見て面白いと思ったこと

個人的に、ChatGPT Pulse は面白い取り組みだと思っていました。

従来のチャットでは、ユーザーが問いを投げ、AIが答えます。一方 Pulse では、過去のチャット、Memory、フィードバック、接続アプリの情報をもとに、翌朝に個人向けのトピックをカードとして提示していました。

うまく定着するかどうかとは別に、チャットで蓄積された文脈を、必ずしもチャットで返さなくてよいという発想が面白かった。すべてを「質問されたら答える」形に閉じ込めず、AIの側から静かに候補を置いておく。この方向は、Personal AI Agent のUIを考えるうえでも残しておきたい論点です。

Personal Context Hubがあっても、Agentには分からないことが残る

Personal Context Hubには、私の予定、行動、過去のメモなどが蓄積されています。それでも、Agentが現在の意図や好みまですべて分かるわけではありません。

例えば、私がある記事を長く開いていたとしても、興味があったのか、内容を確かめていただけなのかは分かりません。行動履歴から推定できることには限界があります。

そこで必要になるのが、私からAgentへ判断を返す経路です。推薦記事なら、like / skip / saveのいずれかを返せば十分です。Agentがすでに知っている文脈は再入力せず、分からない差分だけを小さな操作で返します。

この見方に立つと、UIはAgentから情報を受け取る場所だけではありません。自分の判断をAgentへ返し、次の提案を変えるための接点でもあります。

ただし、skipした提案や、開かなかった提案は、未実行のタスクではありません。Personal AI Agentの提案は命令やTODOではなく、選ばないことも含めて判断材料です。未実行を失敗扱いしないことも、生活の中で使い続けるには大事だと思っています。

「いつ見るか」と「何を返すか」で置き場所を決める

今の私は、情報の置き場所を決めるとき、二つのことを考えています。

一つは、いつ見る必要があるか。もう一つは、見た後に私から何を返す必要があるかです。

  • ジョブの失敗や承認が必要な操作は、すぐに気づき、その場で返答する必要があるのでSlackに流す
  • 調査、相談、ファイル編集は、往復しながら目的を詰めるのでSlackで対話する
  • 推薦された記事や軽い判断を求める内容が入るinboxは開いたときにまとめて見て、like / skip / save / snoozeのような少数の操作だけを返す
  • 今日の予定や軽い状態表示は、返事を求めず、必要なときに見える場所に置く
  • 日報や調査ログは、後から検索できればよいのでObsidianに残す
  • ジョブの状態やメトリクスは、ダッシュボードから直接見る

この分け方なら、Slackを「対話と緊急」の場所に戻せます。開いたときに確認すればよい情報のために、作業を中断されることもありません。

Agentが出せる情報を増やすより、邪魔をしないことのほうが難しいと感じています。

Agentを通さないほうがよい情報もある

チャット以外のUIを考えると、すべてをAgentに語らせたくなります。しかし、ジョブが動いているか、今日の歩数がいくつかといった事実は、必ずしもAgentを通す必要がありません。

そこはデータ基盤に直結したダッシュボードで見るほうが、何が起きているかを確かめやすいです。必要になったら、その数値の理由や過去との違いをHermesに尋ねればよい。事実を見る層と、その意味を考える層は分けておきたいと考えています。

専用UIの側に別の人格や判断を持たせないことも同じ理由です。提案を作るのはHermes、UIはそれを表示して私の反応を返す。ここを混ぜると、どの判断を信頼し、問題があったときにどこを直すのかが分からなくなります。

今考えているもの

今の運用では、Slackに流すものを失敗、承認、相談、明示的な実行結果に絞ろうとしています。 その一方で、推薦された記事やinboxをまとめて見て、少ない操作で反応を返せるモバイルアプリを作った方がよいのではないかと考えています。また誰にも邪魔されずただ思考を吐き出したいときはObsidianに残す。こうした分け方を考えています。

ここで関心があるのは、UIをたくさん作ることではありません。情報の性質と、その後に必要な判断に合わせて、最小限の窓口を持つことです。

まとめ

Personal Context Hubがあると、Agentは私の文脈を多く参照できるようになります。ただ、文脈が増えたからといって、UIの問題が消えるわけではありません。

最近考えているのは、チャットをなくすことではなく、チャットに集めすぎないことです。目的が曖昧なら、チャットで対話する。単純な好みなら、likeやskipで返す。返答が要らないものは、必要なときに見える場所に置く。後から探すものは、チャットのログに埋めずに残しておく。

ChatGPT Pulseを見て面白いと思ったのも、チャットで蓄積された文脈を、チャット以外の形で置いておく発想でした。自分のPersonal AI Agentでも、同じように「対話する場所」と「静かに置いておく場所」を分けたいと考えています。

机の片隅の電子ペーパーや、必要なときだけ開く画面のように、通知で呼びつけないが、見ようと思えばすぐ見られる場所のほうが生活には馴染みます。

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